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額装のBefore-After ルオーの版画を再額装する

■■ 作品保存額装がなされていない ■■
■■ ルオーの銅版画を、再額装する ■■


購入したルオーの版画を見てほしい‥と、持ち込まれた額装品です。
ルオーの版画の額装品/Before
フレームは安っぽい木目模様塗装、マットはカビが生えている様にみえるテクスチャーの白っぽい布貼り。
面金(面先)はウッドフィレの金箔貼りです。
正面からみる分には、可もなく不可もない額装です。

ところが、裏板を外すと
裏板を外すと
裏板はベニヤ合板、外面にはグリーン紙貼り、内面はそのまま。
版画の背当てに合紙を使い、合紙の周囲を塗装用のマスキングテープで止めてある。
マットの裏面にはダンボールを当ててある。

合紙(あいし)とは間紙とも呼ばれるが、版画や水彩画などの紙ベースの作品を保管する際に、作品と作品の間に挟み込んで使う、保護用の薄い紙のことです。今回作品の裏に当てられた合紙は、版画を刷る際に挟む用途の紙で、版画のインクを乾燥させるために在る程度通気性がある洋紙です。

合紙を固定するために付けられた周囲のテープは塗装用のマスキングテープで、そのテープの粘着剤は思い切り下等品で、経年劣化で粘度が下がっていくタイプです。

この合紙は湿度が下がると(乾燥すると)縮みます。縮むとテープの部分で合紙がスライドします。
マスキングテープから引き抜かられる訳です。
今度は梅雨時になり湿度が上がると、合紙は伸びます。しかしマスキングテープの接着部分を押し戻すほどの紙厚と腰がありませんので合紙が伸びた分は皺としてのこります。
次の乾燥期に再び合紙が縮みますと上記の皺を完全に元に戻すことは出来ず、再びマスキングテープの所で引き抜が起こります。
再び高湿度期になり、さらに深い皺をつくります。この繰り返しにより、弛んで皺だらけの背当紙が形成されます。
問題は、弛んで皺だらけの背当紙が作品をガラス面に押し出すことです。最悪、作品がガラス(アクリル)面に接してしまいます。

合紙を剥ぎ取ると
問題ありの版画の固定方法
本紙(版画)が前方に押し出されてメタボ腹のようになっている。
ベニヤの色素が本紙に付いてしまっている。

本紙(版画)の固定方法にも問題があります。
四隅(4箇所の角)を三角型の保護紙で固定していますが、これも上記の湿度変化により好ましくない状態に本紙を追い込みます。
乾燥期に縮んだ本紙は、高湿度期に伸びようとしても紙の自重の為に上には伸びることは出来ません。その分は前方に出っ張るしかありません。

ベニヤ合板によるダメージ
ベニヤ合板の色素によるダメージ
↑画像をクリックすると大きな画像になります。
ベニヤ合板に含まれている灰汁と色素が合紙を通過して本紙にダメージを与えています。
BとCの間は、三角コーナーの保護紙により灰汁と色素がブロックできた部分です。
AとBの間の方がダメージが少ないのは、保護紙+クラフトテープによりブロックできた為です。

ウッドフィレの痕が付いている
ウッドフィレの養成がしていない
ウッドフィレ(面金・面先・内面金)の木部をカバーしていないので、本紙のウッドフィレが接している部分にダメージを与えている。

■最悪な額装と言えます。

1)本紙の湿度変化に対応できる固定方法。
2)木部からの灰汁と色素を遮断する方法。
3)本紙に接する紙類はすべて中性紙もしくは弱アルカリ紙を用いる。
4)ルオーの版画を鑑賞するに相応しい重厚であり質素なフレームとマットの選択

■以上の問題点を踏まえて再額装したのが下記の額装です。


再額装正面
再額装

部分アップ
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版画のマウント方法
版画のマウント 上部
版画のマウント 下部
ヒンジテープはフィルモプラストP90を使用。
版画上部の中心を15センチ長のフィルモプラストP90でマット裏面に固定。
版画の四隅を三角コーナーでホールドする。
ボールドコーナー
基本的には上部のヒンジテープだけでよいのであるが、作品の運搬とか作品を収納するときに横になった時、版画紙の自重により版画が斜めにずれることがあります。
これを防止するために四隅に受けコーナーを付けるのですが、版画が湿気の為に伸びることを考慮して受けコーナーに遊びを設けておきます。
すなわち四隅のコーナーは作品を固定するものではなく、作品をホールドする役目です。それゆえホールドコーナーを呼んでいます。
画像のホールドコーナーはフィルモプラストP90を2枚合わせて作ってあります。版画がいくら伸びてもテープの粘着剤には接しないつくりになっています。
■当店では、紙ベース作品は額縁の中で吊り下げて、湿度が上がったときには自由に伸ばせるように、乾燥期には作品がスムーズに縮められるように、バックバリアペーパーと共にハンギングマウントで対処しています。
■先進国の中で日本の激しい湿度変化は、年間の変化をみても1日の変化をみても紙ベースの作品にとっては最悪である。紙ベース作品をアクリルボックスに入れた額装をアメリカで見てきて、そのスタイルをリクエストされることがありますが、日本の環境では無理だと説明するのに大層難儀します。

額装断面図
再額装断面図

版画の背当紙(保護紙)はベンブリッジのアルファラク・アートケア 1Ply を使用。
上記をフレームサイズより5~8ミリほど小さくカットして、マットの裏面に両面テープ(15センチ長)で固定する。固定する場所は上部のみ一箇所。
保護紙も伸び縮みしますので、吊り下げる状態にしておくためです。
バックバリアは1ミリのチップボード(片面日光ホワイトN貼り)を上記同様に少し小さくカットして、裏板(ベニヤ合板)に両面テープで吊り下げるように固定します。

版画の額装は疑ってください。半数以上が作品保存に問題があります。
特に、みずさわ画廊が販売した畦地梅太郎の木版画の額装はひどい。
版画裏にはいきなりベニヤ合板、しかも裏板止めのプロペラ固定用木ねじが当たっているのもある。
版画の固定方法もいい加減です。
畦地梅太郎の木版画をお持ちの方には、裏板をはずしてみてチェックすることをお勧めいたします。

テーマ : 絵画・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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ラーソン・ジュール・ニッポン㈱

原さん、
ご無沙汰しておりますが、ますますお元気でご活躍のご様子何よりと存じます。
素晴らしいホームページを展開されていて勉強になります。
残暑の厳しい折からご自愛の上お過ごしくださいませ。
大河原
プロフィール

原 護

Author:原 護
額装の駆け込み寺・・・
額装工房アートランド
   店主 兼 職人です
中津川に店を構えて40年
当時は単なる額縁屋!!
ΓΓΓΓΓΓΓΓΓΓΓΓΓ
作品に対する安全と
  人に対する安全を重視
そして・・・恐妻家です。

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